症例集

神経を取った歯が痛むので診て欲しい(難治化しているケース)

■写真1

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根管治療をして欲しいとのことで来院されました。
・1ヵ月以上前に、他医院で神経を取る治療をした。
・その後、痛みが取れず、何回かお薬のつけ替えをしたが、日増しに痛みが強くなってきた。

初診時の歯の写真とレントゲンです。
仮封材がストッピング(熱で柔らかくなるゴムのようなもの)でされており、レントゲンを撮ると、歯冠部に虫歯(感染歯質)が残っているのが分かります(黒い部分)。
また根尖部にはすでに病巣もできており、根尖部近くの根管内には白く写る物(根充材?)も認められました。
「この歯は過去に根管治療をしませんでしたか?」と患者さんに聞いたところ、「いいえ、初めて根の治療をした歯で、間違いなく1ヵ月前に神経を取る治療をしました。」と言われました。


■写真2

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患者さんに治療の同意を得て、まず麻酔をします。そしてストッピングを外しました。
ストッピングを外すと、中から唾液に濡れた綿栓が出てきました。
綿栓は細菌の温床になるので、術者が手で丸めた綿栓を根管内に留置すると感染の原因になることがあります。
次にカリエスディテクター(う蝕検知液)で虫歯の部分を染め出すと、根管口上部がピンク色に染まり、感染歯質が残っているのが分かります。
神経を取る治療(抜髄といいます)の時には、最初に虫歯の部分をしっかり除去します。
面倒でも、カリエスディテクターやカリエスチェックなどを用いて何回も染め出しをして、虫歯の取り残しがないようにします。根管内に細菌が入るのを防ぐためです。
根管治療が終了して、修復物を作る時に虫歯をきれいに取ればいいとおっしゃる先生がおられますが、それはあまり良くないと思います。
虫歯を取っていくと、青い⇒のように、歯質が少なくなってしまう部分がでてきます。ここをそのままにして根管治療に入ると、いくら仮封をしても横から唾液が侵入してきます。
唾液の中には細菌がたくさんいますので、新たな感染を引き起こします。
このような事柄の積み重ねで、本来なら1回か2回で終わる抜髄処置が何回もお薬の付け替えをしても治らないことになってしまいます(難治化)。


■写真3

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虫歯の部分をきれいに除去し、隔壁を作ります。そしてクランプを選びます。
根管治療を行う場合、たいていのケースで隔壁は必要になると思います。
これはラバーダムのクランプをかけるためでもありますし、仮封材の厚みを4ミリ以上確保するためです(4ミリ以下では数日で細菌が根管内に侵入する)。
隔壁を作ることで、根管治療はとてもスムーズに進行していきます。


■写真4

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これは別の患者さんの初診時の写真ですが、この患者さんも「痛みが取れない、数ヶ月以上お薬のつけ替えをしているが治らない」といって来院された患者さんです。
虫歯の部分がたくさん残っていて、隔壁も無いので仮封材も取れていて、綿栓がむき出しになっています。唾液もどんどん侵入してきます。
難治化してしまった典型的なケースです。


■写真5

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最初の患者さんの話に戻ります。
根管長を測定し、作業長を決めて、ニッケルチタンロータリーファイルで拡大していきます。
拡大しながら、5%の次亜塩素酸ナトリウム(ヒポクロ)と17%のEDTAを使って化学的根管洗浄もまめに行います。
根尖孔が少し破壊されていて、おそらく手用ステンレススチールファイルで拡大されたためだと思いますが、根管がオリジナルの方向から直線化して、根尖孔の移動も起こっていました。
下の写真の左側がステンレススチールファイルで、右側がニッケルチタンロータリーファイルです。
ちなみに最初に根管内に写っていた白い物質は、ビタペックスというお薬で、痛みが取れなかったため前医の先生が入れたようです。


■写真6

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初診時が急な御来院で、治療時間をしっかり確保できなかったので、1回目はここまでで終了しました。
水酸化カルシウムを貼薬し、水硬性セメントの仮封材でしっかり仮封しました。


■写真7

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10日後に来院された時には、痛みも消失していたので、根管の拡大・形成を仕上げ、根管充填をしました。
その後はなるべく早目にファイバーポストを直接法で作製し(可能なら根充した日に)、その後修復処置に入ります。
症状が再発するおそれがある歯はファイバーコアまで作って、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)をセットします。
そして3ヶ月ほど様子を見て、症状が消えなかったり、再発した場合には外科的歯内療法に移行します。
今回のケースでは、症状の再発は無いだろうと判断したので、最終の修復処置に入りました。

抜髄処置の場合は、虫歯菌の感染は根管上部に限局されていて、深い部分は感染していないはずなので、深い部分に感染を拡げないように配慮する、そうすればほとんどのケースで抜髄処置は1~2回で終了します。
感染が根尖まで及んでしまい、根尖性歯周炎になると(≒根尖に病巣ができる)、治療の成功率も下がってしまい、外科処置に移行せざるを得ない事もあるので、確実な無菌的処置を心がけたいものです。


歯を白くしたい

■写真1

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歯を白くしたいとのことで来院されました。
もともとテトラサイクリン歯であり、そのために歯の色が茶色くなっていることは患者さんも御理解されていました。
茶色の色を隠すために、歯の表面全体を削ってコンポジットレジンが充填されている歯もありました。
歯を白くするために色々と治療をされてきたようです。
コンポジットレジンを表面に充填する方法では、なかなか歯の色を白くすることは困難ですし、色調も良くなく、またプラークがたまりやすく、虫歯・歯周病のリスクも高くなってしまいます。
歯並びも乱れており、本来ならば矯正治療をして、その後何らかの修復処置で歯を綺麗にすべきだと思いますが、矯正治療は御希望されませんでした。
虫歯も多数あり、セラミックスをかぶせることで、審美的に改善することになりました。
当然根管治療も必要となるので、再治療にならないように、細心の注意を払って根管治療を行いました。


■写真2

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上顎に7本セラミックスを、下顎に5本セラミックスを入れた時点での写真です。
矯正治療をしていないため、歯頸部の位置は変わらないので、右上3番のように「八重歯」になっている歯は歯冠長が長い歯になります。
この患者さんは、美容関係のお仕事をされているので、ずっと歯の色で悩んでこられたようです。
歯の印象が変わるだけで、随分お顔の印象も、お気持ちも明るくなったのではないかと思います。
今後は臼歯部の虫歯の治療も少しずつ行っていく予定です。

歯を削ってセラミックスをかぶせているだけですので、技工士さんが綺麗に作ってくだされば、それなりに見た目は綺麗になります。
しかし、私達歯科医師は意外と見えないところに配慮して治療しています。

①根管治療時に無菌的コンセプトを遵守しているか?~根管治療の精度が低ければ再治療が必要となり、セラミックスを外すことになったり、あるいは外科的歯内療法が必要になったりします。
②フェルールはきちんと確保できているか?~むやみに削らずに、残せる歯質はできるだけ残すことで修復物が長持ちします。
③マイクロスコープ下で丁寧で滑らかな支台歯形成を行えているか?~肉眼だけで形成すると形成ラインがガタガタになります。その分セラミックスの適合も悪くなり、境目(マージン)から虫歯が出来てしまいます。ちなみに「オレはマイクロがなくても綺麗に形成できる」と言われる先生がおられますが、おそらく御自分が形成したのをマイクロで御覧になったことがないのでは?と思います。
④マージンは歯周組織に傷害を与えない位置に設定できているか?
⑤患者さんの咬合をきちんと理解できているか?
⑥歯肉の性状、厚みや炎症の所見は?
⑦印象は精密に採れているか?
⑧患者さんに歯ぎしりやくいしばりなどの習癖はないか?ある場合の対策は?
⑨メインテナンス、クリーニングに定期的にきちんと来ていただけるか?

これらの中の一つでも欠けてしまうと、審美修復は成功しません。
私もまだまだ未熟ですので、これらのことを常に肝に銘じて治療するようにしています。


神経を取った歯が茶色いので白くしたい

■写真1

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右上の中切歯と側切歯が茶色くなっているのを白くしたいとのことで来院されました。
かなり前に神経を取ってから、ずっと茶色いのが気になっていたそうです。
それを改善するために、先日、他の歯科医院でホワイトニングを受けたそうですが全く効果が無かったとのこと。
茶色の部分を見ると、テトラサイクリン歯の縞模様も認められます。

神経を取った変色歯には通常のホワイトニングをしても効果はありません。
なぜならば、神経を取っている歯は内部の象牙質から変色が起こっており、通常のホワイトニングは表面のエナメル質にしか作用しないからです。
裏側から穴をあけてホワイトニングをする「ウォーキングブリーチ法」という方法もありますが、効果が予測しにくいこと、後戻りがあること、左右同じ色に揃えるのはなかなか難しいため私は行っておりません。


■写真2

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レントゲンを撮影しました。
3年前に根管治療をやり直したそうです。
根尖には病変も認められず、自覚症状も特になかったので、再根管治療は必要なさそうだと判断しました。
しかし実際に充填物を除去して、根管口上部に虫歯や汚染が認められれば、コロナルリーケージ(根管口上部からの感染)が起こっていることになるので、その時は根管治療からやり直しが必要です。


■写真3

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患者さんとのカウンセリングの結果、セラミックスを入れて歯の色を白くすることになりました。
そこで、「かぶせるタイプのセラミックス」にするか「表面だけ削ってセラミックスを接着させるポーセレンラミネートベニア」にするかを考えました。
まず2本とも口蓋側(裏側)にコンポジットレジンが広範囲に充填されており、エナメル質の絶対量が少ないので、ラミネートベニアは適応外、またこの患者さんの下顎前歯に1本、前に出ている歯があり、この歯が顎を動かすと上の前歯にかなり強く干渉するため、ラミネートベニアにすると脱離する可能性があるため、かぶせるタイプのジルコニアオールセラミックスにすることになりました。
もしかすると右上の2本の神経を取ることになったのは、この咬み合わせが原因の一つだったのかもしれません。
セラミックスが出来上がった時に、咬み合わせの調整も行うことにしました。


■写真4

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ファイバーポストで築造し、マイクロスコープ下で形成します。
象牙質の変色がかなり強いのが分かります。
幸い根管の中は綺麗だったので、再根管治療は行いませんでした。


■写真5

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左側の歯はホワイトニングを受けられていたので、セラミックスの色も白目になります。
A1とA2という色を組み合わせながら、セラミックスの色を考えます。
技工士さんに写真の提供もします。


■写真6

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ジルコニアオールセラミックスを2本セットしました。
仮歯の期間が少し長かったので、歯間乳頭部の歯肉に炎症がありますが、フロスなどを使ってしっかり歯磨きをすれば炎症は数日でひいてくると思われます。
患者さんにも満足していただきました。

今回は、歯を削ってセラミックスを入れましたが、みなさんはどう思われますか?
健康な歯を削ってまで白くしたくないと思われる方もいるでしょうし、削ってかぶせ物を入れることで、歯が白くなり、長年のコンプレックスが解消されるならそれもありかなと思われる方もいると思います。歯科医師の先生の中でも意見は分かれるのではないでしょうか。
患者さんに歯を削る事のデメリット、またセラミックスは長持ちするとはいえ、永久に(亡くなるまで)持つものではなく、いつかはやりかえの必要があること、そういうことを説明し、それでも患者さんがやりたいと言えば私はやります。
「その歯」は患者さんのものです。専門的なお話しはさせていただいて、最終的な決断は患者さんに委ねたいと思います。


福岡での開業 昔と今(歯科医師の先生向きの話)【番外編】

嬉しいことに、私の医院に歯科医師の先生方が時々見学に来られます。
せっかく来て下さるので、2時間ほど見学していただいて、診療を早目に切り上げ、先生方の質問や悩みに答える時間を1時間ほど設けています。
開業前の「悩める時期」の先生方が多く、私の分かる範囲で相談に乗っています。

私が開業した20年前よりもっと前の時代は「とりあえず開業できれば一生安泰」でした。
どこの歯科医院でも待合室には患者さんがあふれ、朝、並んで待っている患者さんに整理券を配布する医院もあったそうです。

私と血の繋がっていない親戚の伯父さんが久留米の田舎町で歯科医院をやっていましたが、毎日3桁の人数の患者さんを診ていました。
あまりにも忙しすぎて、私の歯の根管充填も綿栓を入れるだけで終了。身内にさえそういう治療をせざるくらいの忙しさだったようです。

しかし私が大学に入学した最初の講義では、教授の「君達は何で歯学部に入ったの?これからの歯科業界の未来は暗いよ。」という言葉から始まりました。

御実家が歯医者さんで、跡継ぎをする先生方も一見楽なように見えますが、お父様の後を継ぐのも意外と大変なようです。
昔からいる衛生士さんは、若院長(息子さん)が新しいことをやろうとすると反発したり、昔から来られている患者さんも、お父様の信奉者のようになっていますので、改革を起こすにも起こせないジレンマに陥り、いっそ別の場所で自分でやりたいと思う先生も多いようです。

しかし金銭的には恵まれている御子息が多いので、いくら息子が反発しても、何だかんだ言ってお父様はあなたを守って下さいます。
そういった意味では悩みは多くても、金銭的に苦労することは少ないと考えます。

私の所に見学に来られるのはほとんどが国公立大出身の先生方です。
実家も普通のサラリーマンで、担保も保証人も当てに出来ず、開業資金も無く、どうやって開業するか悩んで悩んで苦しみ悶えている先生方です。

私の親は自己破産しており、貯金もゼロ。それでも開業できました。
大学は奨学金と塾講師のアルバイトを毎日やって何とか卒業できましたが、卒業後は少しでも給料が高い歯科医院を転々とするフリーター歯科医師でした。
なので私には師匠と呼べる人がいません。
「訳あり歯科医院」を数ヶ月の間だけ、院長先生の代わりに診療するのです。

病気の先生もいましたし、自殺された先生もいましたし、シベリア抑留にあった高齢のおじいちゃん先生のお手伝いとして呼ばれたこともありましたし、アルコール中毒で、診療室の冷蔵庫にビールがびっしり詰まった医院の先生もいましたし、なぜか行方不明になった先生もいましたし、人間と人生の醜く暗い部分を凝縮したものが渦巻いている、そんな歯科医院専門のフリーターを2年間続けました(意外とそういう需要は多いのです)。

そんな私でも、いつかは自分の医院を持ちたいと思っていました。
しかしその当時の銀行は「貸し渋り」の時代で、担保も保証人も貯金も無い私に融資してくれる銀行などありませんでした。
安い居抜き物件を見ても、「安い」のには何かしら良くない理由があるのです。それを繁盛店にするのにはとてつもない労力を要するのです(私はそんな安い居抜き物件すら買えませんでしたが)。
なので居抜き物件を購入してもいいケースは、代診として数年間勤務して、患者さんも先生のことを知っていて、先生も医院の実情を把握していて、院長先生が引退するので、引き継ぎで購入する場合のみにしておいた方が無難です。
歯科商店さんが「いい居抜き物件がありますよ。患者さんもたくさん来てましたよ。」というのは疑った方がいいです。売主が歯科商店さんの顧客だった場合がほとんどなので、悪くは言わないからです。

ところで当時は、福岡市内は歯科医院が過密状態なので、福岡市郊外での開業が一般的に勧められていました。
現在も福岡市内の歯科医院は過密状態ですが、福岡市は人口の増加率が全国でも上位なので、むしろ人口の流入が少なく、高齢化が進む郊外の方がリスクが高いと私は考えます。

また開業物件は絶対に「自分で歩いて探す」ことです。歯科業者さんが持ってくる物件はお勧めしません。
というのは、歯科商店さんは、自分と取引のある歯科医院さんがいない地域の物件を持ってきます。顧客の歯医者さんの近くの物件を他の先生に持って行けば、当然その歯医者さんに怒られるからです。そうなると、もっと開業に適した場所が本当はあるのに、二流、三流の物件しか回ってきません。
なので開業地は実際に自分で歩いてみて、人の流れを見たり、空気を感じたり、自分が歯科医師として成功している将来が想像できる相性のいい場所を自分の足で見つけることです。
そのうち不動産屋さんとも知り合いになって、ネットに上がる前の優良物件を優先的に紹介してくれることもあります。

「太宰府市の外れの開発地に歯科医院とコンビニを作ろうとしている地主さんがいる。それを建設する建設会社の社長さんの口利きで銀行から4000万円おりる。」突如そんな話が私にきました。
将来的には都心部で開業したいなと漠然と考えていましたが、私にはこんなチャンスは二度と来ないと思い、その話に乗ることにしました。
すぐに私は建設会社の社長さんに土下座をして「よろしくお願いします」と頭を下げ、すぐに銀行の支店長と融資係の人が呼びつけられました。
「この先生に融資してやってよ。」社長さんの一声で開業できました。
現在は4000万円では開業できません、6000万円は必要です。

その社長さんは、大手のマンション建設会社の社長さんで、経済界の大物と接点を持てたことは他業界を知ると言う意味でとても勉強になりました。
歯科医師は歯科業界という極端に狭い世界で生きています。この社長さんは、後に脱税で逮捕されました。また肺ガンになって若くしてお亡くなりになりました。
私は今でもこの社長さんを尊敬しており、こういう方と打ち合わせをしたり、二人きりで一緒にケーキ(この社長さんはケーキ屋も買収していた)を食べたのは、私の人生で大きな収穫であり、大切な思い出です。

今は昔と違い、どこでもいいからとにかく開業できれば安泰という訳にはいきません。
自分の診療スタイルを見極め、またどんな診療を提供したいのか、そのために適した立地条件は何か、しっかり考えなければなりません。

私にはこの場所しか選ぶ余地がなかったので、ここで開業しました。こんな貧乏な私でも開業できたことに感謝すべきなのですが、正直なところ、自分で見つけた場所ではなかったので、現在物凄く後悔しています。違和感といいますか、この土地と相性の合わない感覚をずっと20年間感じています。

①都心部、福岡なら博多駅や天神で開業したい
②郊外で小児から高齢者まで幅広く地域密着型で診療したい
③駅近で多くの患者さんをターゲットにしたい、利便性の高い歯科医院にしたい
大まかに分けるとこの3パターンになります。

根管治療専門医やインプラント専門医、矯正歯科専門医など、ある分野に突出した実力と才能をお持ちの先生は、交通の便がいい①で開業すべきです。当然自由診療中心となります。
他の歯科医院さんからの紹介患者さんも行きやすくなります。また基本的に紹介や患者さんが御自分で調べて来院するので、「路面店舗」である必要がありません。ビルの上層階のテナントで十分です。家賃もその方が安くなります。また他科との連携もスムーズにいきます。完全予約制で少人数の患者さんをじっくりと診療できます。
ちなみにこのタイプの先生が「路面店」で開業してしまうと、「飛び込みの患者さん」が何も知らずに入ってきたりするので大変になります。

一般歯科医(GPの先生)は何でも一通りこなす先生で、このタイプの先生が一番多いでしょう。悪く言えば特徴の無い診療なので、ビルの上層階で開業しても患者さんは誰も来ません。
②で交差点などの、目立つ立地に開業し、ユニットも多目に設置し、歯科衛生士さんも含めたチームの総合力で勝負することになります。
最初はユニット3台でもいいのですが、患者さんが増えたときにすぐにユニットを増設できるように、最初から配管だけはさらに数台分、通しておくといいと思います。

③のパターンも集客は望めますが、通勤客をターゲットにしているので、夜遅くまで診療する必要があり、代診の存在が不可欠になります。また駅近でも目立たなければならないので、駅に直結していて人の流れの途中にある場所とか、駅を出てすぐに目に入る場所を見つけなければなりません。駅近でも、駅の裏とかガード下で夜道が暗いような場所では患者さんに来てもらえません。
また会社帰りの患者さんが多いのでキャンセル率は高いです。急患も随時受付、遅刻も可、予約優先制くらいの緩い感じがいいと思います。

私のところに相談に来られる先生方は多くが①の物件を希望されています。やはりせっかく開業するのなら華やかな街中でやりたいのも分かります。
しかし、特に天神のテナント料は年々上昇してきており、一般の保険中心の診療では採算が合わないくらいに高くなっています。
西通りの路面なら、坪あたり7万円、西通りから横道に入った路面店舗でも、坪あたり3~4万円です。今後も上昇傾向は続くでしょう。テナント料の安い上層階で開業しても、スペシャリストの先生でなければ、誰からも存在を知られない歯科医院になり、運転資金はあっという間に底をつきます。
また新しい物件は普通賃貸契約ではなく、定期借家契約のテナントが多いので、満期後の再契約についてきちんと確認しておく必要があります。

天神には今まで多くの医療法人が分院を出してきましたが、採算が合わず撤退した医院も少なくありません。
成功している分院は③の要件を満たしているものがほとんどです。③なら院長(理事長)が自ら行かなくても、普通の雇われ分院長で十分だからです。失敗しているのは、ビル上層階の視認性の低い分院です。いくらホワイトニングや審美歯科を全面に打ち出しても内容が希薄ならば、本気で天神や博多駅で診療しているスペシャリストの先生には勝てないのです。

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これは私の医院ですが、駅やバス停からは遠く離れているので、車で来院される患者さんが多いです。
交差点の角地にあり、またコンビニやスーパーが隣にあるので、②の郊外の地域密着型の歯科医院になります。
ここでは、あまり専門性を出さずに、小児から高齢者までを幅広く診療していく必要があります。
私のように「マイクロを使った自由診療中心で、小児は診ない、受付は17時まで」ではこの場所の利点を全く生かしきれておらず「失格」に値します。
私と真逆の先生なら大繁盛すると思います。
ちなみに面積は40坪、駐車場5台分付きで(詰め込めば9台くらい停めれます)、家賃38万円(税抜き)です。


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これは昨年の夏頃に見ていた物件ですが、天神の警固神社の横の物件で、かなりいい立地の新築テナントでした。
ワンフロア・ワンテナントで37坪ほどありますが、家賃は70万円程度で割安感がありました。
ただ定期借家契約が10年間でしたので、そこがネックでした。
エアコンも最初からいくつか付いていて、①に該当するとてもいい物件です。


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これは今出ている、新築物件です。①あるいは③でもいける物件です。
これもワンフロア・ワンテナントで、西鉄福岡駅から新天町を通れば、雨に濡れずに行ける好立地の物件です。
30坪程度ですが、家賃は2階でも90万円弱で、かなり勇気のいる物件ですね。


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ところで歯科医院でも人材の確保が難しくなっています。
①や③の歯科医院はあまり求人では苦労しないようです。
問題は②です。最近の若者は車を持っていない人も多く、交通の便が良くない田舎だとなかなかスタッフが集まりません。
特に②はスタッフを含めた総合力で勝負しなければならないので、なおさらです。
そこで一度結婚・出産でリタイヤした衛生士さんに着目です。郊外に住んでいる方が多く、夜遅くまでは無理ですが「大人の衛生士さん」はとても戦力になってくれます(うちでも助かっています)。

以上、色々私見を交えながら、私の拙い経験をもとに、歯科開業について書かせていただきましたが、現在は「歯科コンサルタント」という方々もおられますので、有能なコンサルタントさんを探して相談に乗ってもらうのもいいかと思います。
しかし私はこのご時世、「開業」だけが全てではないと思います。
何千万円も借金して、お金の悩み、スタッフの悩み、患者さんの悩みなどを院長一人が抱え込まなければなりません。
もし大手の医療法人の分院長で年収1000万円もらえれば、開業などせずに一生分院長で過ごすのもありだと思います。


前歯部のブリッジのやりかえ

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奥歯の虫歯の治療に来られた患者さんです。
お口の中を全体的に検査してみると、上顎前歯の4本ブリッジにおかしなところが見つかりました。


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中切歯が2本欠損しており、側切歯2本を支台歯にしたブリッジです。3年前に他医院で作ったそうです。
マイクロスコープで側切歯の歯頸部を見てみると、ブリッジと支台歯の間に隙間を認めました。


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次にレントゲンを撮ってみると、明らかにブリッジが浮き上がっていて、虫歯ができていました。


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患者さんに状態を説明したところ、ぜひやりかえの治療をしたいと御希望されたので、ブリッジを外して治療していくことになりました(インプラントはしたくないとのこと)。
ブリッジは簡単に外れました(というか、ほとんど取れかかっていました)。
2本の側切歯はどちらも虫歯ができており、特に左上2番の虫歯が大きく、神経を取る必要がありました。
ブリッジの内面を見てみると、汚染されており、ブリッジが長期間ゆるんでいる状態で、中に食物やプラークが入り込んできて、虫歯ができたと考えられます。


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ここで、考えなければならないのは、「どうしてブリッジが外れてしまったのか?」ということです。
歯学部の学生さんでも分かりそうなことですが、中切歯2本の欠損を中切歯より小さな側切歯2本だけでは支えきれないということです。
食事をする度に力が加わり、セメントは破壊され脱離してしまいます。
おそらく前医の先生は、犬歯が天然歯なので削りたくなかったのでしょう。
患者さんは当時、犬歯を支台歯に入れるかどうかという説明は聞いていないとのことでした。


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犬歯も支台歯に加えることに同意していただいて、6本ブリッジにすることになりました。
犬歯は厚みがあるため、たいていは神経を残したままで被せることができます。
これはスタッフが作った仮歯です。うちのスタッフは仮歯を作るのが私より上手です。


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ジルコニアオールセラミックス6本の歯型を採りました。
これはセレックでは作れないので、技工士さんに作ってもらいます。


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とても適合のよい安定したブリッジが出来上がりました。
天然歯を削ることは、歯の寿命を縮めるようで、歯科医師として心が痛みますが、削ることをためらったために、ブリッジが短期間で外れて、側切歯に神経を取るほどの大きな虫歯を作ってしまい、また患者さんに短期間に高額な出費を2回もさせてしまったことは歯科医師側の責任です。
お口の中は咀嚼による咬合力、睡眠時の歯ぎしりやくいしばりなどの力が加わるため、インプラントもブリッジも義歯も常に「力の分散」を考えて設計を考えていく必要があります。


セレックで前歯を修復~ブラックマージン

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前歯の審美障害を主訴に来院されました。
数年前に上顎前歯に3本、メタルセラミックスを入れたそうですが、歯肉との境目のブラックマージンが気になるとのことです。


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他の歯も白くしたいと御希望されたので、まずオフィスホワイトニングを行いました。
ホワイトニング直後なので、色ムラがありますが、時間とともに落ち着いてきます。


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メタルセラミックスを外しました。
支台歯の虫歯を綺麗に除去し、またメタルコア(金属の土台)をファイバーコアに置き換えました。
セラミックスから、メタルコアの色が黒く透けて見えるからです。
また隣接する歯(右上2番と左上3番)の側面の虫歯もコンポジットレジンを充填し治療しました。


■写真4

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セレックで前歯3本を作製しました(今回はe.maxを使用)。
全体的に明るい感じになりました。
歯肉縁上のマージンの適合も良好です。


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セレックはマイクロスコープを使いながら丁寧にかつ綺麗に支台歯形成を行い、支台歯を直接、3Dカメラで撮影することで適合の良い修復物を作ることができます。
また形成したその日のうちに、セラミックスをセットすることで、接着効果を最大限にまで上げることができます。


■写真6

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適合の良い修復物を入れることで、将来の「やりかえの治療」の回数を減らすことができます。
その結果、歯は長持ちします。


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材質や治療法により、適合性が劣る修復物があります。
その結果、歯磨きを頑張っても、また虫歯ができ「やりかえの治療」を余儀なくされます。
何回も「やりかえの治療」を行うと、その歯はいずれ抜歯になるリスクが高くなります。