症例集

再根管治療

■写真1


「歯肉がプクッとふくれている。」とのことで来院されました。
右下5番と6番の間に、サイナストラクト(婁孔 ろうこう)ができています。
原因は右下5番の歯で、根尖部に病巣が確認できます。


■写真2


根管治療に入りました。
フェルールは大事ですので、できるだけ歯質を保存するように気を付けながら銀歯のかぶせ物とメタルコアを外していきます。
メタルコアは少し細く削って、超音波スケーラーの振動をコアの上部に与えます。
しばらくすると、ユラユラしてきてポロッと外れます。
ちなみに両隣の金属の側面が傷だらけですので、研磨するか、やり直しの治療をした方が良さそうです。


■写真3



ラバーダムのクランプをかけるためと、仮封材の厚みを確保するために隔壁を作ります。
隔壁を作っている途中で、根充材がスルスルと取れてきました。


■写真4

これで下準備ができたので、マイクロスコープを用いながら根管内を探索していきます。
根尖部の破壊が起こっており、#100のファイルでようやくアピカルストップが得られました。
根管の拡大・清掃を行い、その日は水酸化カルシウムを貼薬して終わりました。


■写真5


2回目に来院された時には、サイナストラクトは消失していたので、根管充填をしました。
根尖の破壊が起こっていたので、MTAで根充するか、普通にGPポイントで根充するか迷いましたが、バイオセラミックシーラーを用いてGPポイントで根充しました。
根充が終わったら、そのままラバーダム防湿下でファイバーコアを作ります。
しばらくプロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)で様子をみて(3ヵ月間ほど)、サイナストラクトが再発しなければ最終的なかぶせ物を作ります。
もしサイナストラクトが再発したり、病巣の改善が見られない場合は、外科的歯内療法を選択することになります。


ハイブリッドを奥歯に多用すると

ハイブリッドセラミックスとは、プラスチックにセラミックスの粒子を混ぜて作った白い修復物です。
料金が本物のセラミックスに比べると比較的安価であるため、安く白い歯にできるということで選択される患者さんが多いのですが、欠点も多いため慎重に選びたいものです。
ちなみに当医院では、患者さんが本物のセラミックスと勘違いされないように、「ハイブリッドプラスチック」と呼んでいます。

■写真1





強度が低い。
特に、下顎の最後方臼歯(主に7番)に入れると、歯冠長があまり確保できないため薄っぺらい形になり、ハイブリッドプラスチックの厚みが確保できないので、割れやすくなります。
最後方臼歯は咬合高径(咬み合わせの垂直的な高さ)を維持するために大切な歯なので、ここはしっかりとした材質を選びたいものです。
私は最後方臼歯のかぶせ物には、ジルコニアオールセラミックスか白金加金を勧めることが多いです。


■写真2





摩耗しやすい。
ハイブリッドプラスチックは歯より柔らかいため、奥歯に多用すると、割れないまでも、年々摩耗していきますので咬み合わせが全体的に低くなっていきます(元々の咬み合わせと変わってしまいます)。
すると、下顎前歯が上顎前歯を突き上げるようになり、前歯を痛めてしまう方もおられます。また顎関節への影響も無視できません。
またいったん低くなった咬み合わせを拳上する(元に戻す)治療は大がかりになりますので、そうならないためにも、奥歯に多用するのは避けた方が賢明です。
しかし、咬み合わせに影響しない程度の小さなハイブリッドのつめ物くらいなら、さほど問題ないと思います(下の写真のハイブリッドくらいならぎりぎり大丈夫か?)。


■写真3

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虫歯になりやすい。
本物のセラミックスと違って、表面がガザガザしているので、出来上がった当初は綺麗に見えますが、徐々に汚れが着きやすくなり、変色・劣化が目立つようになります。
プラークも付着しやすく、その結果虫歯ができやすいです。


■写真4

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下顎の6番です。古くなったハイブリッドプラスチックをe.maxでやりかえました(セレックで作製)。
e.maxのかぶせ物も、最後方臼歯に使うと割れてしまう方がいるので、私はなるべく6番までにしています(e.maxの小さいつめ物なら7番に使っても大丈夫です)。


■写真5





年数が経ったハイブリッド。欠けたりして虫歯もできていました。
虫歯をきれいに除去して、セレックでオールセラミックスを作りました(IPS Empress CADを使用)。
色調はいまいちですが(セメントの色を茶系にすべきだった)、適合性は良好です。


■写真6

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古くなったハイブリッドのかぶせ物。欠けたりして虫歯も内部にできていました。
虫歯をきれいに除去して、セレックでかぶせ物を作りました(セルトラを使用)。


■写真7

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くいしばりがあり、e.maxでも割れてしまう可能性がある患者さんです。
ナイトガードも使ってもらっていますが、念のためジルコニアオールセラミックスで修復しました。
ジルコニアはまず割れることはありませんが、かなり硬いので、定期的に咬み合わせのチェックをしていくことが必要です。

*ハイブリッドセラミックスは小さいつめ物や、小臼歯にかぶせ物として使用するにはさほど問題ないと思います。
しかし、かぶせ物の場合、補強するために、内面に金銀パラジウム合金を使用することも多いため、その適合性やアレルギーの原因となることは無視できません。
つめ物やかぶせ物を「見えるところだから白く、見えないところだから銀歯で」という安易な選び方ではなく、さらに一歩踏み込んで、咬合関係や歯ぎしりやくいしばりがないか、材質の特性なども考慮しながら材質を決めていくことが必要です。
患者さんには難しい内容ですので、私達歯科医師がそれぞれの材質の長所・短所を説明し、その歯に選択可能なものをいくつかチョイスしてあげて、最終的に患者さんに決めていただければいいと思います。


歯根端切除術

全てのケースを歯内療法(通常の根管治療)のみで解決できればそれに越したことはありませんが、現実的には歯内療法のみでは解決できないケースも多く、その場合「外科的歯内療法」を併用することになります。
私のような一般歯科医で行える外科的歯内療法には限界がありますので、より困難な症例は根管治療専門医の先生に診ていただくようにしています。

■写真1



右上6番の歯です。「3年程前に他医院で神経を取ったが、浮いた感じや時々腫れた感じがするので診て欲しい」とのことで来院されました。
レントゲンを見ると、近心頬側根に根尖病巣が認められました。


■写真2

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金属のかぶせ物を除去し、まずは感染根管治療を行いました。
根尖病巣のある近心頬側根は、根尖が破壊されていて、アピカルストップが得られない状態でした。


■写真3

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患者さんには根管治療に入る前に、「根管治療(歯内療法)だけではおそらく治らないだろうから、その時は外科処置を併用した方がいいと思われますが、どうされますか?」とお話ししていて、「ぜひお願いします。」と同意を得ていましたので、根管充填をした後、歯根端切除術を行いました。
近心頬側根の先端約3ミリをカットし、病巣を掻爬し、止血しながらMTAセメントで逆根管充填を行いました。


■写真4

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手術後は歯肉退縮が起こりますので、しばらくはプロビジョナルレストレーション(ていねいに作った仮歯)を入れて数ヶ月待ちます。
症状も無くなったので、最終的なかぶせ物の作製に入りました。
根管治療後のかぶせ物は「根管治療の予後」を左右する大事な要因となります。
コロナルリーケージ(歯冠側からの漏洩、簡単に言うと、上から細菌が入らないように)を防ぐためにも、築造(土台)とかぶせ物は精密にしっかりと作る必要があります。


■写真5

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本来は3~6ヶ月毎の予後評価を3~4年間くらいは行いますが、この患者さんは遠方に住まわれており、なかなか予後を見させていただけませんでした。
たまたま、他の歯の治療で当医院にお見えになった時の術後12ヶ月後のレントゲン写真です。
近心頬側根の根尖病巣もだいぶ影が薄くなっており、症状も無く予後は良好のようです。


なぜ銀歯は虫歯になりやすいのか?

■写真1



何回も銀歯に虫歯ができて、やりかえを経験された方は多いと思います。
「自分の歯磨きの仕方が悪かったのだな」と思いがちですが、意外とそうではない要因もあるのです。
今からお話しすることは「前回の治療時に虫歯の取り残しはなかった」事を前提にお話しします。


■写真2

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まず根本的に「銀歯は腐食する、接着ではなく合着、プラーク(歯垢)が付着しやすい、そして精度はあまり高くない」と私は考えています。
そのために銀歯を入れては数年後にまた虫歯ができ、また歯を削り歯質が減る、その繰り返しです。


■写真3

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そして神経を取ることになり、かぶせ物の大きな銀歯になり、その境目にまた虫歯ができてしまいます。


■写真4

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歯肉との境目にできた虫歯は致命的になることもあり、あまりにも大きいと抜歯になります。
また神経を取った歯は、根尖病巣ができたり、歯根破折を起こすこともあり、最悪の場合は抜歯になることもあります。
歯を抜いたら、ブリッジにしたり、インプラントにしたり、人生の最期まで歯の問題で悩むことになります。
この終わりの見えない「やりかえの悪循環」をどこかで止めなければなりません。


■写真5

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虫歯にならないことに越したことはありませんが、仮に虫歯ができてしまって治療しなければならないとしましょう。
「やりかえの悪循環」を止めるためには「細菌の侵入と増殖」を防ぐことが必要となります。

まず銀歯は基本的に歯質と接着しません(合着といいます)。
昔のセメントに比べれば、現在のセメントは飛躍的に性能が上がっていますが、それでも金属と歯質は完全に接着しているわけではありませんので、ちょっとした隙間さえあれば細菌は侵入していきます。

また銀歯の良くない点に「精度の低さ」があります。
銀歯は歯型を採って技工士さんに作ってもらいますが、歯型は100%正確にお口の中を再現しているわけではなく「誤差」を含んでいます。
誤差のある模型で詰め物を作っても、誤差のある銀歯しか作れません。
また銀歯は硬すぎて「展延性」が小さく、細かい部分が精密に作れません。
なので、削った歯に銀歯を入れてみると、隙間があちこちに開いています(マイクロスコープで見ると愕然とします)。
そこから徐々に唾液が侵入してセメントを溶かしながら細菌も侵入していきます。
銀歯を外すとたいていはこのように漏洩により、セメントが汚染されています。
そして、その下からは虫歯菌に感染した象牙質が出てきます。


■写真6

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この歯には腐食した銀歯が入っていますが、果たして銀歯にまでする必要があったのでしょうか?
銀歯は人によってはアレルギーを起こすこともありますし、また銀歯は入れるために健全な歯質も削らなければならないことが多いです。
これくらいの小さな窩洞なら、コンポジットレジンで十分です。
コンポジットレジンにももちろん欠点はありますが、虫歯の部分のみ削ればよく、また歯質と接着しますので、銀歯に比べれば虫歯の再発は少ないと思います。


■写真7

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銀歯の周りに大きな虫歯ができています。
この患者さんは虫歯を取ったあと、白金加金のつめ物を入れられました。
白金加金やゴールドは展延性が大きく、細かい部分まで精密に作りやすく、また腐食しにくいので、虫歯になりにくく、長持ちするので私はお勧めします。
実際、歯医者さんは御自分の歯や御家族の歯には、ゴールドや白金加金を入れることが多いです。


■写真8

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この患者さんは、向かって左側にゴールドのつめ物、右側にハイブリッドプラスチック(ハイブリッドセラミックス)が入っています。
ゴールドはセットして12年経過していますが、全く問題ありません。
ハイブリッドは8年経過しています。ハイブリッドはレジン成分が劣化・変色しやすく、プラークが付着しやすいのが欠点です(虫歯になりやすい)。


■写真9

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銀歯が腐食し、外してみると中に虫歯ができていました。
セレックでオールセラミックスを作って8年経過後です。
オールセラミックスは歯質と化学的に接着しますので、唾液や虫歯菌の侵入が少なく、またツルツルしているので、プラーク(細菌の塊)が付着しにくく虫歯になりにくいです。
セラミックスのプラークの付着率は、銀歯の10分の1と言われています。
またセレックは3Dカメラで削った歯を直接撮影するので、模型が必要ありません。
マイクロスコープ下で支台歯形成をきれいに行えば、かなり精度の高い修復物が作製できます。


■写真10

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ジルコニアオールセラミックスも虫歯になりにくい優れた材質です。
しかし、丁寧な支台歯形成、印象を行わないと適合の悪いジルコニアが出来上がってくるので、どんな修復物でもそうですが、丁寧な支台歯形成、歯肉圧排、印象操作を確実にすることが必要です。
マイクロスコープを使うと丁寧な治療が行えます。

*最後まで長文、読んでいただきありがとうございます。
また「たとえ保険の銀歯でも精密に治療できる、それによる虫歯の再発やアレルギーなど起こらない」とお考えの先生もおられますので、色々な考え方があるのだなと御理解下さい。


エンド・ペリオ病変

■写真1


右下の6番が腫れて、痛むとのことで来院されました。


■写真2


レントゲンを撮ってみたところ、神経は取っているようでしたが、根充材もほとんど入っておらず、根の周りに病巣ができて、骨が大きく吸収されていました。


■写真3



プローブで歯周ポケットの深さを測ってみると、プローブが中の方まで深く入っていき、膿と血がたくさん出てきました。
いわゆるエンド・ペリオ病変(歯内・歯周複合病変)で、歯周ポケットと根尖病巣が交通している状態です。
普通に根尖病巣があるだけの場合に比べて、治る可能性が低くなります。


■写真4



まず金属のかぶせ物を外しました。
中のメタルコア(土台)の辺縁は腐食しており、土台を外すと大きな虫歯もできていました。
歯冠側からの漏洩(細菌の侵入)もありそうでした。
メタルコアを外すと、中は黒い汚物で満たされており、少量の根充材が認められました。


■写真5


虫歯の部分をきれいに除去し、ラバーダムのクランプをかけるための隔壁を作製しました。
また隔壁を作ることで、治療中の仮封材が取れにくくなり、厚み(4ミリ以上)を確保することができます。
細菌の侵入をできる限り最小限にするために仮封材は重要です。


■写真6



根管内を探ってみると、根管がかなり細く、少し湾曲していました。
#15まで手用ファイルで拡大し、その後はバイオレイスというニッケル・チタンロータリーファイルで根管拡大・形成を行いました。


■写真7


症状も無くなったので、バイオセラミックシーラーを用いてシングルポイント法で根管充填しました。
しばらくは築造後、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を数ヶ月間装着し、症状が再発しないか、深い歯周ポケットは改善していくか、レントゲンも撮りながら経過観察していきます。


前歯の深い虫歯に対して

■写真1


「前歯の裏側に虫歯で穴があいている、痛みなどはありません。」とのことで来院されました。


■写真2


ところで、これはこの患者さんの下顎前歯の舌側を写したものですが、歯石がたくさんついていて、全顎的に歯肉の炎症が強い状態でした。
このように歯周病で歯肉に炎症の所見がある場合、まず患者さんが御自分できちんとプラークコントロールできるようになって(歯磨きの指導をしたり、歯石除去、PMTCなどを行って)、歯肉の状態が改善してから治療に入るようにしています(でないと治療中に出血があったりして接着を阻害しますし、治療後の虫歯の再発リスクも高くなります)。
しかし「あまり休みが取れないので、今日治療して欲しい。」と強く御希望されたので、治療に入ることになりました。


■写真3

レントゲンを撮影したところ、虫歯がかなり深く(赤い)、また根尖部に透過像が認められたので(青い)、根管治療が必要なのかなと思いました。


■写真4


しかしパルプテスター、冷温痛テストも正常、打診痛も(-)、根尖部圧痛も(-)でした。
隣りの歯は虫歯が無く、根尖部が患歯と同じように黒く写っているので、歯髄が壊死して透過像ができているのではなさそうだなと判断しました。


■写真5




マイクロスコープを用いながら、削り過ぎないように慎重に虫歯の部分を取り除いていきます。
う蝕検知液で染め出しを繰り返し行いながら、手用器具などを用い丁寧に感染象牙質を除去していきます。
もし露髄(神経が出てくる)しそうになったら、すぐにラバーダムをかけれるように準備しておきます。
もし神経の一部が出てきても、きちんと止血できれば、MTAセメントなどを用いて神経を温存することができます。


■写真6

感染象牙質(虫歯の部分)をきれいに除去し、コンポジットレジンを充填しました。

*今回は何とか神経を温存できましたが、これくらい虫歯が深く、神経の近くまで達している場合は定期的な経過観察(症状やレントゲンも含めて)が必要となります。
長い期間、虫歯菌の影響を神経が受けている場合は、「神経の生命力」が弱っており、虫歯の治療をしても、後々神経が壊死したりすることもあります。

*神経を温存できるかどうかは、「神経の生命力」と「確実な接着による封鎖」にかかっています。
なので、3-MiXやドックベストセメントを使ったから神経が温存できるというわけではないと私は考えます。
言い換えれば、世間で魔法の薬のように謳われている3-MiXやドックベストセメントを使わなくても、「神経の生命力」が強く、「確実な封鎖」ができれば神経は温存できます。


奥歯を失くしたら

■写真1


「上の前歯が折れた」とのことで来院されました(青い
神経も生きている生活歯で、少し痛いとのことでした。
その周りの歯も所々欠けています。


■写真2


この患者さんは、下顎に部分床義歯を使っておられます。
しかし作製して年数が経過しており、義歯の人工歯がすり減って、義歯を入れても奥歯の咬み合わせが弱く、奥歯でしっかり咬み合わせができていませんでした。
*義歯を使っている方は定期的に歯科医院で咬み合わせなどもチェックしてもらいましょう(毎日使っていると不具合があっても気付きにくいものです)。


■写真3

その結果、咬む度に下の前歯が上の前歯を「ガンガン」突き上げる状態になり(赤い)、この患者さんは、割合歯周組織がしっかりしているので、(歯周病による骨吸収が少ないため)、歯が破折してしまったと思われます。


■写真4


ちなみに歯周病が進行して歯の周りの歯槽骨が少ないと、下の前歯が上の前歯を突き上げて、上の前歯が次第に前方に出てきます(前突)。


■写真5


別の患者さんです。
ところどころ痛い歯があるとのことで来院されました。
奥歯が無く、前歯のみで食事をされているとのことでした。


■写真6



残っている前歯を見ると、歯が欠けたり、グラグラしていたり、歯牙及び歯周組織にダメージが認められました。
この患者さんも奥歯が無いために、上下の前歯がガツンガツンと当たり、歯や歯周組織を痛めていると考えられます。

このような状態の患者さん達にお話しを伺うと、共通点があります。
・入れ歯は数年前に一度作ったが、痛くてそれ以来使っていない(調整にも行っていない)。
・入れ歯が無くても食事はできる、何でも食べれる。
・インプラントは手術が怖い、あるいは金額が高く経済的に無理。
・「全部、歯が抜けたら総入れ歯にするからこのままでいい」、あるいは「自分はもうすぐ死ぬからこのままでいい」(健康で長生きしそうなのに)。
という類の事をみなさんおっしゃられます。


■写真7


小さい入れ歯から慣れていきましょう!

奥歯の咬み合わせをきちんと確立させることは、咀嚼効率を高めるだけでなく、咬合力を分散させ、歯牙と歯周組織、咀嚼筋、顎関節も含めて調和のとれた状態を保つために必要なことです。
咀嚼効率などを考えるとインプラントが最適だと思いますが、どうしても無理な方はせめて義歯を使えるように治療(訓練も含む)した方がいいと思われます。

確かに義歯で食事をすることは大変だと思います。お口の中は特に感覚が敏感です。
また痛いところが出ると使うのも嫌になり、「入れ歯がなくても食事できるからいいや」などと思ってしまいます。

しかしなぜ小さい入れ歯から慣れていく必要があるのかを考えて下さい。
今後、人の平均寿命はますます延びていきます。義歯を使用される患者さんの数も、また義歯を使う期間も増加することが予想されます。
加齢により、順応する能力(入れ歯に慣れる力)は落ちていきます。
年老いていきなり総義歯を使いこなすのは無理です。
義歯は自分の歯ほどは咀嚼できないかもしれませんが、それでも全く無いよりかはましです。
繰り返しになりますが、奥歯で咀嚼できることで食事の幅が広がりますし、健康にもいいことは周知の事実です。
歯を失くしたらまず小さい義歯から慣れていき、もし運悪くさらに歯を失って大きい義歯になっても対応できるように、中年の頃から老後に備えて準備しておくことは大切なことです。


■写真8


この患者さんは最初に来院された時は、口腔内が崩壊している状態で、「どうしようか?」という感じでしたが、残せない歯は抜歯し、残せる歯はきちんと治療して残し、最後に上下に部分床義歯を作りました。

それから数年経ちますが、毎月メンテナンスを欠かさず受診され、残っている歯の本数は少ないですが(9本)、とても安定した状態を保っています。
またこの患者さんは初診時には、「年齢の割には老けて、病的な」印象を受けましたが、今ではとても若々しく健康そうで、外車のオープンカーに乗って当医院に毎月来院されています。


どんな場合に親知らずを抜歯すべきか?

■写真1


現代人、特に日本人の顎の骨格は近年ますます小さくなってきています。
そのために親知らず(8番)の生えるスペースが無く、「萌出異常」を多くの患者さんに認めます。
親知らずはどんな場合に抜歯した方がいいのか、その判断基準は歯科医師の先生によって異なりますので、担当医の先生に相談されてみて下さい。
当医院では抜歯するかどうかは、「悪さをする親知らずは抜歯し、悪さをしない親知らずは様子を見る」というスタンスで判断しています。


■写真2

このレントゲンの患者さんのように親知らずが4本ともきれいに真っ直ぐに生えていて、虫歯もなく、上下の親知らずがきちんと咬み合っている場合は抜歯の必要性はありません。


■写真3


歯冠が中途半端に出ているような場合は、汚れもたまりやすく、写真のように親知らず自体に虫歯ができていたり、あるいは親知らずの周りの歯肉が度々炎症を起こして痛むような場合は抜歯した方がいいと思います。


■写真4


このレントゲンのように親知らずが斜めに生えていて、手前の歯(7番)に虫歯を作ってしまうような場合も抜歯した方がいいです。


■写真5


親知らずが今まで痛んだことも腫れたこともない方も多いかと思います。
しかしそのようなケースでも親知らずの隣りの歯(7番)との間の顎の骨が少なくなって、7番は歯周病が進行したのと同じような状態になっている場合があります。
親知らずの手前の歯(7番)を守るために抜歯した方がいい場合もあります。


■写真6


親知らずと咬み合う歯がないと少しずつ伸び出してくることがあります。
この患者さんは上の親知らずが伸び出して、舌の歯肉に当たって傷を作っていました。
このような場合も抜歯になります。


■写真7


親知らずが斜めに生えていて、隣りの歯を押して、前歯の歯並びが悪くなるような場合も抜歯した方がいいと思います。
矯正治療をした患者さんで、真横に向いて埋もれている親知らずをそのままにしている方を見かけますが、矯正治療をされる患者さんはこの患者さんのように早目に抜歯した方がいいと思います。


■写真8


親知らずは歯根が曲がっていたり、下顎管(神経と血管が入っている)に近接している場合も多く、抜歯時のリスクも少なからずあります。
なので親知らずの歯根が完成する前に抜歯すると、楽に抜けるケースもあります(高校生くらい)。


義歯使用患者さんの酸蝕症

■写真1


左下4番と5番の歯がしみて痛いとのことで来院されました。
長年通院していただいている患者さんですが、今回期間が空いて、1年振りくらいに来院されました。
お口の中を見せていただくと、1年前と様相が全く変わっていてびっくりしてしまいました。


■写真2


1年前は上の写真のような状態だったのですが、わずか1年足らずで歯冠が崩壊しています。


■写真3



他の部位の歯も同じようにエナメル質が少なくなり、中の象牙質が露出しています。
上顎前歯も薄っぺらくなっています。
また歯冠が崩壊して咬み合わせが低くなってしまっているので、当たりが強くなり、詰め物が取れている歯もありました。

患者さんに「最近何か酸性の強い飲食物を摂られていませんか?」と聞いたところ、「酢玉ねぎ」をここ1年くらい毎日食べているとのこと。
TVで「血液がサラサラになって健康にいい」と放送していたそうです。
作り方も教えてもらいましたが、「玉ねぎをスライスして酢に漬けておくだけ」の簡単なレシピらしく、インターネットで検索すると確かに「酢玉ねぎ」がたくさん出てきました。

確かに体にはいいのかもしれませんが、酸性の強い飲食物は歯に悪い影響を与えることもあるので、摂取の仕方、歯磨きの仕方などに注意が必要です。
またこの患者さんのように、部分義歯を使っている方は残存歯が少なく咬合が不安定で(部分的に咬合力が集中する部分がある)、また加齢により唾液が少なくなり緩衝作用も弱くなっているので、より酸蝕の影響により歯質の崩壊が進行しやすいので注意が必要です。
以前も「酸蝕症」と「胃食道逆流症」の症例を書いたので、そちらも参照していただけるとありがたいです。


前歯3本をジルコニアで修復

■写真1


上顎前歯3本を綺麗にしたいとのことで来院されました。
神経を取ってある歯で、他の歯に比べて茶色味が強く、テトラサイクリン歯の特徴である縞模様も認められました。
コンポジットレジンが広い範囲に充填されていて、口蓋側には虫歯の部分も多く、虫歯を除去すると健全歯質があまり残らないため、ジルコニアオールセラミックスで修復することにしました。


■写真2


再根管治療を行い、ファイバーポストを直接法で作製しました。
フェルール効果を考慮し、できるだけ健全歯質は保存します。
今回は根充材がきちんと入っていなかったので根管治療からやり直しましたが、もし綺麗に根充材が入っているケースでも、虫歯ができていれば、根管口上部からの感染(コロナルリーケージ)があると考え、根管治療からやり直した方が安心です。


■写真3


マイクロスコープ下で支台歯形成を行い、印象を採り、ジルコニアオールセラミックスを作製しました。


永久歯の先天性欠損

永久歯の歯胚が生まれつき無く、永久歯が萌出しないことがあります。
日常の診療でも度々目にすることで、特別珍しいことではありません。

本来萌出すべき永久歯が無い場合、その部位の乳歯が抜けずに残っている場合があります。
その場合、ほとんどの先生方が「できるだけ長い期間乳歯を長持ちさせましょう。将来抜ける時が必ずくるので、その時にまた相談しましょう。」と言われると思います。
遅くても20~40歳くらいまでにはグラグラしてきて、どうしようもなくなったら抜歯し、その後インプラントにするのか、ブリッジにするのかなどを担当の先生と相談して決めていくことになります。
まれに「適正な時期(本来抜ける年齢)に乳歯を抜歯して、矯正治療をしましょう。」というお考えの先生もおられます。

■写真1

右下のEがグラグラするので抜いて欲しいとのことで来院されました(銀歯の右側の歯です)。
この患者さんは74歳の女性で、この歯が乳歯であることを御存知ありませんでした。
乳歯であるEはだいたい小学校5年生か6年生くらいに生え替わります。


■写真2

歯根周囲の骨が無くなっています。
しかしこの乳歯もよく頑張ったものです。11歳前後で本来ならその役目を終える歯ですが、74歳まで口腔内で機能していたのですから。


■写真3


少量麻酔をし、抜歯を行いました。
抜いた部分に、この患者さんはブリッジを御希望されました。


前歯をセレックで修復

■写真1


上顎の中切歯2本のメタルセラミックスをやりかえたいとのことで来院されました。
具体的にどんな風に変えたいのか、どんな歯にしたいのか問診していきます。
患者さんが望まれている歯のイメージが曖昧な時はまず、精密な仮歯(プロビジョナルレストレーション)を作って話し合いながら最終的なイメージを作り上げていきます。
この患者さんは「色と形」で修正はさほど難しくありませんでした。

ただここで申し上げておきたいのは、咬み合わせ、顎運動、下顎前歯の位置・形を考慮に入れて、その制約の範囲内でしか修正はできないということです。
「歯を中に入れて欲しい」「長くして欲しい」など色々御希望はあると思いますが、顎の動き方や下顎前歯、口唇の形などで、上顎前歯の適切な長さや向き、角度などが決まってきます。
*歯列矯正を前処置として行えば、また条件は変わってきます。


■写真2

まず色ですが、左右の歯の色が違っています(技工的な問題)。
下顎前歯に合わせて、もう少し白目にします。
また正中の歯のカーブ(青いライン)が間延びした感じがして、カーブの角度を変えるだけでも、少し引き締まった印象、知的な印象を出すことができます。


■写真3


メタルセラミックスを外しました。
メタルコアが入っています。
フェルール効果は大切なので、できるだけ歯質を減らさないように慎重にメタルコアを除去し、再根管治療を行いました。


■写真4


今回はセレック修復を御希望されたので、根管治療が終わったら一気にファイバーポストを直接法で作製し、その日のうちにセレック(直接法)でオールセラミックスを作製しました。
直接法で、1日で終わらせるのは接着効果を最大限にするためです。
歯型を採って、模型を撮影してセレックで作製(間接法)すると誤差が大きくなりますし、またかぶせ物が出来上がるまでの数日間で支台歯が汚染し、接着効果が落ちるためです。
隣りの左右2番に劣化したレジン充填もありましたので、それもやりかえて治療を終了しました。


縁下歯石

■写真1


右上の4番が「グラグラして痛いので、抜いて欲しい」とのことで来院されました。
確かに歯周病の末期で、「保存困難・抜歯適応」と判断いたしました。


■写真2

この患者さんの下顎前歯部です。たくさん歯石がついています。
おそらく歯肉「縁上」だけではなく、「縁下」にもたくさんついていると思われます。


■写真3


※クインテッセンス出版・病態写真集から引用

みなさんの中には定期的に歯石取りに歯科医院に行かれている患者さんも多いと思いますが、実は歯石は歯肉の表面に見えているものだけではなく(縁上歯石)、歯周病が進行していくと、歯周ポケットが深くなり根面にもついています。これを「縁下歯石」といいます。

歯周病の治療では、この縁下歯石をきちんと除去することが大切で、私達は「ルートプレーニング」と呼んでいます。
歯周ポケットの中の歯石を取る時は、当医院では麻酔をして、1回の治療で4~6本ずつ縁下歯石を除去していきます。
ルートプレーニングは主に歯科衛生士さんの仕事なのですが、見えない部分の歯石を取るので、かなりの熟練した技術が必要となります。
上手い具合に縁下歯石を取って、歯周ポケットの中が綺麗になると歯肉が引き締まって、ポケットが浅くなってきます。
器具が到達できないくらい深い部分に縁下歯石がある場合や、ルートプレーニング後にも歯周ポケットの改善が見られない場合は歯周外科処置に移行します(もちろん患者さんが同意した時のみ)。


■写真4


この患者さんの右上4番を抜歯しました。
やはり縁下歯石がたくさんついています。
縁上歯石はベージュ色をしていますが、縁下歯石は黒い色をしています。


ブラックマージンを改善

■写真1


上顎前歯に3本メタルセラミックスが入っていますが、ブラックマージン(歯肉の境目の黒い部分)を綺麗にしたいとのことで来院されました。
咬み合わせも問題なかったので、セレックでe-maxを作製することにしました。


■写真2

まずメタルセラミックス3本を除去して、内部の状態を確認します。
真ん中の1本にはメタルコアが入っていたので、除去してファイバーポストに入れ替えました。


■写真3


セレックでe-maxを作製しました。ブラックマージンも無くなり、明るい感じになりました。


メタルタトゥー

■写真1




歯肉に黒い部分があります。
これはメタルタトゥーといい、かぶせ物の中の金属の土台(銀合金のメタルコア)の成分が溶け出して歯肉に沈着したり、あるいは金属を削った際に金属粉が歯肉に入り込んだものです。
メタルタトゥー自体は害の無いものなので、そのまま放置しておいても大丈夫ですが、前歯部にあると審美的に問題となることがあります。


■写真2

メタルタトゥーが小さい範囲であればレーザーを使って除去できますが、あまりにもタトゥーの範囲が広い場合などは歯肉移植をするなどかなり難易度の高い処置が必要となります。
そうならないように審美性の要求される前歯部などでは、金属の土台ではなく、白いファイバーポストを使用したり、かぶせ物にも金属を使用しないことです(白いかぶせ物でも内面に金属が入っている場合がありますので歯科医師の先生に相談して下さい)。


■写真3




この患者さんは、上顎の中切歯2本の歯肉の色が黒ずんでいるのを改善したいという御希望でした。
メタルタトゥーというほどではありませんが、まずかぶせ物(メタルセラミックス)を外してみました。
次に銀合金のメタルコアをファイバーポストに入れ替えて、オールセラミックスで修復しました。
レーザーの処置などは一切行っておりませんが、土台とかぶせ物をやりかえただけで歯肉の色がよりピンク色になっています。


■写真4

この患者さんは、歯肉が広い範囲で黒ずんでいますが、これはメタルタトゥーではありません。
歯肉にメラニン色素が沈着したもので、口呼吸や喫煙、受動喫煙が原因で起こるものです。
弱い出力でレーザーを当てたり、フェノール・アルコール法でピンク色の健康的な歯肉にできますが、原因が無くならなければまたメラニン色素が沈着してきます。


側切歯の反対咬合

■写真1




この3人の患者さんにはある共通点があります。
上顎の中切歯(真ん中の2本)は正常被蓋で(上の歯が下の歯より前に出て少しかぶさっている)、中切歯の隣りの側切歯が反対咬合になっています(上の歯が下の歯の内側に入りこんでいる)。
このような咬み合わせの患者さんでは、中切歯はすでに根管治療がなされていて、かぶせ物が入っているケースが多く見られます。
ということは、このような咬み合わせの方は中切歯に何らかのダメージを受けやすいと考えられます。

原因としては、青い⇒の下顎の歯が、上顎の中切歯(赤い⇒)と側切歯の間に食い込んで、「くさびを打つ」ような力が働くために中切歯に過度な咬合力が加わるためだと考えられます。
咬み合わせを調整しても、食物には厚みがありますので、食事で咬む度に中切歯には常に外に押し出される力が働きます。
また加齢とともに、臼歯部はすり減って咬合は低くなっていくので(酸蝕もあるので)さらにくさびを打つ力は強くなっていきます。
最悪の場合、中切歯は歯根破折を起こし抜歯になるケースもあります。


■写真2

もしお子さんが小学生くらいで、このような咬み合わせになりそうならば、床矯正で歯並びを比較的簡単に改善することができるかもしれません。
床矯正装置は取り外しが可能で、ネジを少しずつ回すことにより軽度の歯並びを改善したり、顎堤を広げることで、将来抜歯しないと綺麗に歯が並ばないようなケースでも抜歯を回避できたりします。
またマルチブラケット矯正より治療費も安くすみ、小学校低学年くらいから比較的取り組みやすい矯正法です(詳しくは矯正専門医の先生にお尋ねください)。

*よく「矯正はいつから始めたらいいのですか?」「永久歯に全て生えかわってからがいいですか?」など質問を受けますが、私個人の考えでは、乳歯が生えそろった頃には矯正歯科専門医の先生に診てもらい始めた方がいいと思います。
乳歯の段階ですでに歯並びが窮屈だと、永久歯に生えかわった時にほぼ叢生になりますし(例えば下顎前歯の歯並びが乱れて重なったり)、顎堤を床拡大装置で早い段階で拡げてあげると意外ときれいに永久歯が生えるスペースを獲得できます。
私は矯正専門医でないのであれこれ言えませんが、私の娘は「永久歯が生えそろったら、小臼歯を4本抜歯してマルチブラケットで矯正しましょう」と、知り合いの矯正の先生に言われていましたが、私が小学校4年生くらいから床矯正で拡大をしていった結果、抜歯せずに7番まできれいに並びました(現在中学3年生)。
4年生だと少し遅いので、5~6歳くらいから受診すれば、色々と打つ手はあるかと思います。


修復物と歯周組織の反応

かぶせ物やつめ物を入れた後、それが歯周組織も含めて良好な状態を維持できるかどうかは、もちろん患者さん自身によるプラークコントロールも重要ですが、歯科医師の治療に依存する部分も大きいかと思われます。
保険治療で使用する金銀パラジウム合金、硬質レジン前装冠、ハイブリッド冠などの修復物は、どうしてもその材質の物的特性から限界があり、致し方ないところもありますが・・・。

最近はジルコニアオールセラミックスがどこの歯科医院でも多く使われるようになってきました。
従来のセラミックスはどうしても割れてしまったり、接着の操作性が難しかったり、患者さんも歯科医師も困惑してしまうケースが多々ありましたが、ジルコニアはまず割れることがありませんし、操作性も容易なので、歯科医師も患者さんに安心して勧めやすいという背景があるようです。

■写真1


3ヶ月前に他の歯科医院さんでジルコニアオールセラミックスを入れたが歯肉からの出血が止まらないので歯周病の治療をして欲しいとのことで来院されました。
その歯科医院さんで「歯磨きの仕方が悪い、もっとしっかり磨きなさい」と言われて、頑張って磨いているけど出血が減らないとお悩みでした。


■写真2


裏側を見てみると、セメントがたくさんはみ出ています。
レントゲンの所見と、またマイクロスコープで歯周ポケットの中をのぞいて見ると、たくさんのセメントが歯周ポケット内に溢れ出ていて、また形成ラインが「生物学的幅径」を侵害して滑らかではなくガタガタに設定されていて、かぶせ物自体の適合性に問題があるのが分かりました。
患者さんに歯周病の治療(今回のケースでは歯周外科手術まで)が必要であること、かぶせ物もやりかえないと根本的な解決はできないことをお話ししましたが、3ヶ月前に治療したばかりでお金が無いので、もうしばらく経ってからやりかえたいとのことでした。


■写真3


同じ患者さんの臼歯部のジルコニアオールセラミックスです。
ここからも出血する、歯間ブラシが通らないとお悩みでした。
マージンからセメントがはみ出ていて、歯肉の炎症が強く出ています。
このままでは短期間のうちに、中が虫歯になって歯自体が長持ちしないと思われます。
「やっぱり値段が安ければいいというものではないんですね・・・。」とおっしゃっておられました。

*この患者さんは、あちこちの歯科医院さんに「セラミックスいくらですか?」と電話して、治療費の安い医院を探したそうです。
患者さんの中には「どこの歯科医院もだいたい同じような治療をしてくれるだろう。それならば1円でも安い方がよかろう。」と思っている方が意外と多く、しかし歯科治療の自由診療料金は電化製品の料金とは意味が違い、どこで治療しても(買っても)同じという訳ではないと思われます。


■写真4



他の患者さんの歯です。
4ヶ月くらい前に他医院さんでジルコニアオールセラミックスを入れたが臭いがしたり、咬むと痛いので診て欲しいとのことで来院されました。
ジルコニア自体がマージンを超えて大きくはみだしていたり、セメントがはみだしていたり、一部露出している歯根には抜歯になるほどの大きな虫歯ができていました。
こういうケースで一番悩むのは、患者さんにどうお伝えしたらいいのだろうかということです。
安易に前医の治療結果を否定することは躊躇しますし(前医の先生も一生懸命やった結果でしょうし)、しかし実際に悩んでいる患者さんが目の前にいるわけです。
この患者さんは抜歯になるという深刻な状態だったので、大学病院に仲介に入ってもらい診てもらうことになりました。
大学病院の検査の結果、ジルコニアをかぶせている数本が抜歯ということになりました。
現在、「もう終わったことは仕方ないから前向きに頑張っていきます。」と大学病院で抜歯をしてインプラント治療を受けられています。


■写真5



また別の患者さんです。
やはりジルコニアと歯質のマージンはセメントで埋め尽くされています。

いくつかジルコニアの不適症例を紹介しましたが、これらは単にセメントを取り残しているのではなく、ジルコニアオールセラミックスの適合が悪く形成ラインにぴったりと合っていないために、「セラミックスが浮いて隙間が空いているところをセメントで埋めている」という状態です。
ジルコニアにしろ、セレックにしろCAD/CAMという方法で作製されます。カメラで歯やあるいは模型をスキャンして作製します。
なので、ブロックを削り出すミリングマシーンのドリルが追従できないような歯の形成をしていたり、あるいは印象模型自体の精度が低ければ適合のいいセラミックスは作製できません。
その精度が低いものをお口に接着させるので、たくさん空いている隙間にセメントがたまったり、はみ出しているのです。


■写真6








①精度が高いセラミックスを作るためには、セラミックスの形成ルールを守る必要があります。銀歯を入れる形成法とは違います。
②CAD/CAMの場合、できればマイクロスコープを使って、マイクロがなければ最低でもルーペを使って、ミリングマシーンのドリルが追従できるような丁寧で滑らかな形成を行います。
③生物学的幅径を意識してマージンの設定をします。特に前歯でブラックマージンを恐れて必要以上に歯肉縁下深くにマージンを設定しないようにします。
④可能ならば3Dカメラで直接歯牙を撮影して「直接法」で作製する。設備が院内に無く、無理ならば精度の高い印象採得を行い精度の高い模型を作る、当然歯肉圧排も必要です。

これらは私自身も日々気を付けていきたいと思っていることで、さらに患者さんが御期待される自由診療に近づくよう努力してまいります。


セラミックスと接着

■写真1

つめ物やかぶせ物には色々な種類があり、咬み合わせ(対合歯との関係)、くいしばりや歯ぎしりはしていないか、虫歯の大きさ、患者さんの審美的な要求度、経済的理由などにより、歯科医師・スタッフと患者さんと相談しながら決めていきます。
当医院では2010年からセレックを導入しており、私の臨床の柱となっています。


■写真2





保険診療でよく使われる金銀パラジウム合金(いわゆる銀歯)のやりかえです。
歯質との境目に虫歯が見えています。
銀歯を外してみると、汚染したセメント(黒い部分)が見えてきました。
汚染したセメントを除去すると虫歯が中にできていました。

これは銀歯が歯と接着しておらず、隙間から唾液とともに細菌が侵入していたということです。
近年のセメントの性能はかなり向上していますが、それでも銀歯と歯質とは「疑似接着」のようなもので「合着」と呼ばれます。
そのために銀歯は取れたりゆるんだりしやすいので、余計に健全な歯質を削って、脱離しにくい形態(複雑な形態)にして「機械的な維持」でなるべく取れないようにします。

この歯はセレックでオールセラミックスを作りました。
6年後の写真です。状態は良さそうです。


■写真3

この患者さんは8年前に当医院で、犬歯にセレックで作ったオールセラミックスを入れられました(赤い⇒)。
ブラッシング不足で歯肉の炎症が少しありますが、おおむね良好です。
その後、この患者さんは他県に転勤され、5年前に隣りの側切歯(青い⇒)に保険診療で硬質レジン前装冠を入れられたそうです。

側切歯のかぶせ物はブラックマージンになっていたり、歯肉にメタルタトゥーができているなど多々問題があります。それより3年古いセレックの方が綺麗です。
セラミックスは表面がツルツルしているので、プラーク(細菌の塊)がつきにくいため、虫歯や歯周病になりにくく、歯自体を長持ちさせることができます。


■写真4


銀歯をやりかえてセレックでオールセラミックスを作った7年経過後の写真です。


■写真5



8年前に当医院で上顎の中切歯(赤い⇒)に2本セレックでオールセラミックスを入れました。
セレックを始めて間もない頃の症例ですが、状態は良好です。
側切歯に他医院で入れた(青い⇒)硬質レジン前装冠のブラックマージンが気になるとのことで、同じセレックでの修復を御希望されました。


■写真6





セレックは2台購入し、これはセレックオムニカムという機種です。
ソフトも最新のバージョンで、計算が速くて便利になりました。

これが3Dカメラです。当医院では直接法しか行わないので、このカメラで削った歯を直接撮影します。
歯型を採って、模型を撮影して作る「間接法」は誤差が大きくなるので私は行いません。
また削った当日にセラミックスを接着させる(即日修復)ことで、接着効果を最大限にすることができます。

セラミックス治療では非常に繊細な「支台歯形成のルール」が必要となります。
そのためにマイクロスコープは私には必需品です。


■写真7




繰り返しになりますが、銀歯はアルジネート(ピンク色の粘土のようなもの)で歯型を採って作るので、あまり適合性が良くありません。
金銀パラジウム合金自体も展延性が小さく(精密に作れない)、またアレルギーの原因になることがあります。
また銀歯にはプラークが付着しやすいため(セラミックスの約10倍)、歯質との段差から細菌が侵入しやすくなります。


■写真8


最後におもしろい写真ですが、この患者さんは他医院で20年以上前に入れたセラミックスが汚くなってきたので、やり替えたいとのことでした。
歯質とのマージン部分には虫歯ができていたので、内部にも大きな虫歯ができているかもしれないと思いましたが、意外や意外、内部にはほとんど虫歯ができていませんでした。
写真は、窩底部にセラミックスの層が一層接着して残っている状態を撮ったものです。
このセラミックスは20年前のセメントでつけられているはずですが、「接着」、つまりセラミックスと歯質が化学結合しているためにあまり適合性の良くないセラミックスでも内部への細菌の侵入が起こらなかったと考えられます。