歯科用CT

症例1

■写真1

左下の奥歯が咬むと痛いとのことで来院されました。

まず通常のパノラマレントゲンを撮影いたしました(レントゲンでは向かって右下)。

親知らずが埋伏していますが、「親知らずが埋まって炎症を起こしているためですね。」ではなさそうです。

パノラマレントゲンだけでも、ほとんどの歯科医師の先生は親知らずが原因ではなく、左下7番(親知らずの1つ手前)の歯根破折が原因であると診断できますが、患者さんにはなかなかピンとこないと思います。


■写真2



そこでCTを撮影いたしました。
CTは3次元的に、色んな方向から診ることができます。

パノラマレントゲンでは分かりづらい左下7番の歯根破折がはっきりと確認できます。
また歯根破折に伴い、歯根の周りの骨が吸収され、病巣が広がっているのを確認できます。

患者さんにも十分納得していただきました。
この7番は抜歯になりました。

症例2

■写真1

50代男性。右下がズキズキ痛むことを主訴に来院されました。
お口の中を診ると、少し虫歯はありますが、神経が痛むような大きな虫歯はありません。


■写真2

まずパノラマレントゲンを撮影いたしました。
すると右下4番と5番の2本の歯にかけて、直径2センチほどある大きな病巣(レントゲンでは向かって左側の黒い円形の影)がありました。

2本の歯の神経が何らかの原因で同時に死んで、膿が溜まっているのでしょうか?


■写真3

次に2本の歯に電気歯髄診断(パルプテスター)を行い、神経が生きているのか、死んでいるのかテストを行いました。
すると右下4番の歯は生活反応を示し、神経は生きていました。
それに対して右下5番の歯は失活反応を示し、神経が死んでいるようです。

しかしこの電気歯髄診断の数値は100%確実なものではありません。


■写真4




より精密に診断するため、3次元CTを撮影しました。
パノラマレントゲンと同様に、右下4番と5番のどちらにも病巣があるように見えますが、上から4枚目のCT画像から、実は病巣は5番の歯に出来たもので、4番の歯は無関係であることが分かりました。

よって右下4番は生活歯であり、根管治療の必要はなく、右下5番が原因歯(失活歯)であると特定し、5番のみ根管治療に入りました(5番の歯が失活した原因は中心結節の破折による感染? 根管治療・症例6 を御覧下さい)。

最初のパノラマレントゲンのみの情報に頼ると、治療の必要のない4番の歯の神経まで取ってしまうところでしたが、電気歯髄診断とCT画像により、正確に原因歯を特定できた症例です。

症例3

■写真1

40代女性。右下6番の鈍痛を訴え、感染根管治療を行いました(レントゲンで向かって左下の奥から2番目)。
このときレントゲンで、隣の右下7番の根尖部に類円形の石灰化物(円形に白く写っている部分)を認めました。
右下6番は診断のためにCTを撮影し、その時右下7番の石灰化物についても一緒に確認しました。


■写真2


レントゲンでは石灰化物は右下7番の根尖部に連続しているように見えますが、CTで様々な方向から確認したところ、石灰化物は右下7番とは繋がっておらず、顎骨内部に単独で存在していました。
このことから歯が原因の石灰化物ではなく、局所的な骨硬化症※と考えられます。

※骨硬化症とは
骨の異常な硬化が起こること。境界明瞭なエックス線不透過像を示し、多くは炎症に対して反応性に起こるが原因不明なことも多いです。

今回の症例のような石灰化物は、通常良性の物であり何らかの処置を行う必要性は殆どありません。

症例4

■写真1


右下6番を他院で治療、数ヶ月通うも痛みがひかないことを主訴に来院されました。
レントゲンを撮影すると、根尖部に病巣(黒い影)を認め、根尖孔(根の先の穴)が大きく開いており、破壊されていることが予想されます。
また前医の先生が根尖孔外に押し出した薬が病巣内に白くポツポツと点在しています。

本来根管は根尖付近で狭窄しており、根管治療後にこの狭窄部に軟組織の瘢痕化による被包、または硬組織(セメント質)が添加し閉鎖することで治癒します。
しかし根尖が破壊されていると、この治癒が進まず、痛みが引かなかったり再発の可能性が高まります。


■写真2

仮の蓋を外すと、血液と膿がついた綿栓が入っていました。
マイクロスコープで見ると、根管内部から溢れ出る膿が確認できました。
歯科治療では、綿栓を留置しておくことで中の状態を確認したりしますが(あるいは薬を綿栓につけて貼薬する)、現在は綿栓そのものが菌の温床となり、感染の原因になると言われているため、当医院では綿栓の使用・留置は行いません。


■写真3


予後不良であることが予想され、抜歯になるかもしれないことを御了承いただいてから、根管治療に入りました。
患者さんの歯を残したいという強い御希望に沿う形で、対応させていただきました。
治療に入ると、やはり根尖孔が破壊されていました。
マイクロスコープを用いて根管内の汚れを除去すると、症状は落ち着いてきました。


■写真4



その後痛みは消失するも、根尖付近の歯肉が腫れ、根管も4つ見つかったため、正確な診断のためにCT撮影を行いました。
すると、下顎管(神経や動脈を含む管)に達するほどの大きな病巣が見つかりました。
レントゲンで見るよりはるかに大きく、CTではこんなにもハッキリ写るのかと驚きました。
もう少し早い段階でCTを撮ってみるべきであったと、反省いたしました。

下顎管に達するほどの病巣は、一般歯科の治療の範囲を超えており、このまま根管治療を続けても治らないと判断し、九州中央病院口腔外科に御紹介させていただきました。
口腔外科にて、病巣掻爬と歯根端切除手術を行っていただき、何とか歯を残すことができました。

症例5

■写真1


左下5番の頬側の歯肉に小さいフィステル(婁孔 ろうこう)ができています。
これは歯根の周りにたまった膿の出口です。

レントゲンでみると歯根の中央あたり、メタルコア(金属の土台)の先端を中心に黒い影が認められます。
ここから膿が出てきているようです。
「もしや・・」と思いCTを撮影しました。


■写真2

レントゲンで診るとメタルコアは、ほぼ歯根中央に装着されているように見えますが、CTを撮影して別角度からみると予想通りメタルコアが歯根を突き破って頬側に飛び出して装着されています。
根管拡大の方向は間違っていないようなので、おそらくコア形成の時に頬側方向に誤って削ってしまい、歯根を突き破ってしまったと思われます。


■写真3


残念ながら、この歯は抜歯になりました。
抜歯した歯をみると、歯根に穴があいてひびも入っていました。