歯科金属アレルギー

はじめに

下の写真を御覧下さい。歯科金属が原因で起こった皮膚症状です。金属を除去したところ皮膚症状は徐々に改善していったことが分かります。

金属アレルギー ケース1

初診時の皮膚症状

パッチテストでHg(水銀)
に陽性反応が出ました。

約1年後の皮膚

金属アレルギー ケース2

初診時の皮膚症状
パッチテストの結果 Co(コバルト)、
Ni(ニッケル)に陽性を示しました。

金属を除去したところ、症状は徐々に改善しました。

2.それでは金属アレルギーはどうして起こるのでしょう?

まずお口の中の銀歯が溶け出して金属イオンとなります。
その金属イオンが体のタンパク質と結合し、「異物」と見なされます。それが体の免疫機構から攻撃を受け、体に障害や炎症を引き起こします。これが金属アレルギーで、全身のどこにでも起こる可能性があり、花粉症のように、ある日突然発症する可能性があります。

3.この「見いだし症候群」に当てはまる方は金属アレルギーの可能性があります

<見い出し症候群>

4.歯科金属アレルギーが疑われる場合は…

1.パッチテスト

患者さんが希望され同意が得られた場合に行います。当クリニックでは16種類の金属の試薬を貼付します。

Al(アルミニウム)、Co(コバルト)、Sn(スズ)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Mn(マンガン)、In(インジウム)、Ir(イリジウム)、Ag(銀)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Au(金)、Cu(銅)、Hg(水銀)

銀歯はいろんな成分からできています。一般的によく使われている銀歯は、金銀パラジウム合金(略して金パラ)ですが、金パラはAu(金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)、Ir(イリジウム)、Sn(スズ)、In(インジウム)などからできています。

どの金属イオンに対してアレルギーがあるのかを、パッチテストを用いて調べます。
パッチテストは背中で行います。また2日間、背中に貼ったままで2回目の判定が終わるまでは入浴できません。

(例)月曜、当クリニックでパッチテスト開始

↓2日後

水曜日の朝、御自分で検査用のバンソウ膏をはがす。
その日に来院して1回目の判定

↓翌日

木曜日、来院して2回目の判定

↓さらに4~6日後

翌週の月~水曜日、来院して3回目の判定

特にPd(パラジウム)などは1週間ぐらいして反応が現れることもあるので、
しっかり3回目までの判定が必要となります。

 

2.抗原除去療法 ~ お体にあった材質で歯科治療を


◆オールセラミックスと
ハイブリッドプラスチック

アレルギーの原因となる金属が判明したら、今度はそれをアレルギーを起こさない材質のものと交換してあげることが必要となります。これを抗原除去療法といいます。

多くの金属イオンにアレルギーのある多価アレルギーの患者さんの場合、代替材料としては金属を含まないセラミックスやハイブリッドプラスチックなどを使用いたします。

5.お気軽に御相談下さい

以上、歯科金属アレルギーについて大まかに御説明しましたが、金属を除去したからといってすぐに皮膚炎症が改善するわけではありません。早くて2~3ヶ月、長い場合では1~2年かけて徐々に良くなっていく場合もあります。私どもスタッフ一同、金属アレルギーで悩んでおられる患者様のお力になれるよう、時間をかけてじっくりと精一杯頑張りたいと思います。自分は金属アレルギーではないか、今は特に症状はないが、将来金属アレルギーになるのが心配という方も、まずはお気軽に御相談下さい。

なお、写真については、井上昌幸先生監修の「GPのための金属アレルギー臨床」からお借りいたしました。ありがとうございました。

6.費用について

パッチテスト(カウンセリング料込み)は¥18,000(消費税別)となります。
セラミックス治療・フリーメタル治療などの費用につきましては御相談下さい。

7.金属アレルギーQ&A

パッチテストをせずに金属を全て外し、金属が無い状態にしたいのですが可能ですか?

可能です。
ただしフリーメタル治療が可能かどうかは咬み合わせや、歯ぎしりなどの習癖がないかどうかも重要となってきます。
歯ぎしりやくいしばりがある場合はナイトガードというマウスピースを就寝中着用する必要がある場合もあります。
またフリーメタルにする場合、必然的にオールセラミックス治療になりますが、最近ではオールセラミックスの種類も多いので、歯科医の先生によく相談されてみて下さい。
ただ将来的に歯科金属を仕方なく使用しなければならない事もありますので、御自分の体に合う金属、合わない金属を知っておく事は意義があることだと考えます。そういう意味でもパッチテストは有意義であると考えます。

セラミックス治療はどこの歯科医院でも同じように受けれますか?

セラミックス治療には歯科医師の先生の熟練度が重要となります。
歯の削り方、接着の仕方など、銀歯を入れる場合と全く異なります。
セラミックス治療をよく学んでおられる歯科医の先生をお勧めします。

フリーメタルにしたら必ず金属アレルギーは治りますか?

あくまでも当医院の見解としてお読み下さい。
金属を除去してフリーメタルにして、1、2ヶ月で劇的に皮膚症状が消えた方もおられますし、1~2年かけてゆっくり症状が消えていった方もおられます。
またあまり変化が無かったケースも多くあります。
アレルギー疾患には多くの因子が関与していますので、「絶対」ということは言えません
*「マルチファクトリアル~種々の因子が発症に関与し、病因が多岐にわたるもの」
また掌蹠膿疱症や口腔扁平苔癬などの難治疾患は症状が治りにくいと感じます。

突然、金属アレルギーの症状が出ることはありますか?

あります。また中年の女性に発症する割合が多いと感じます。
おそらく、女性の方が男性よりアクセサリーや化粧品に含有される金属成分に接触する機会が多いからだと考えます。
またお口の中や周りだけではなく、お口と離れた全身に症状が出ることも多いです。

パッチテストに適した季節はありますか?

冬がおすすめです。2日間はお風呂に入れませんし、パッチテストのシールが汗ではがれないように、涼しい季節がおすすめです。
またパッチテストは必ず7日後の判定までしっかり行って下さい。48時間では足りません。なぜならば、パラジウムや金などは、3日目まで反応がなくその後に反応が出る場合もあるからです。

パッチテストをして、たくさんの金属成分にアレルギーが出ました。これは珍しい方ですか?

多くの金属にアレルギーがある(多価アレルギー)は決して珍しくなく、逆に当医院のパッチテストの結果を見ると、数種類の金属成分にアレルギーがある方がほとんどです。

こういう方は、使用できる歯科金属がありませんので、必然的にフリーメタル治療になります。

ガルバニー電流とは何ですか?

異種金属間の電位差に起因する電流です。隣り合う歯や咬み合わせの歯に違う種類の金属が入っているとガルバニー電流により、舌痛症が生じることもあります。

チタンはアレルギーを起こしませんか?

チタンは生体適合性の高い金属ですが、チタンアレルギーの症例も報告されるようになってきました。たいていの方は大丈夫だと思います。

根の中にある(表面に露出していない)金属の土台もアレルギーの原因になることがありますか?

あります。メタルコアやスクリューピンの成分が溶け出して、アレルギーの原因となることもあるので、メタルフリーの場合は極力除去すべきです。極端に長いメタルコアは外せないこともあります。

金属を除去する時に気をつけることは?

お顔にタオルをかけたり、口腔外バキュームで飛沫金属をできるだけ吸引すること、まめに患者さんにうがいをしてもらうこと、可能ならラバーダムをかけることが有効です。
金属を除去すると、一時的にアレルギー症状が悪化することもあります(フレアアップ)。

ハイブリッドプラスチックはアレルギーを起こしませんか?

ハイブリッドプラスチックはレジン系の材料なので、レジンアレルギーが無ければ大丈夫です。

歯科金属アレルギーにより引き起こされる疾患にはどのようなものがありますか?

歯科金属アレルギーは、お口の中の金属が腐食し、イオン化して、口腔粘膜や消化管から吸収され、血行性に全身に運ばれ、到達した部位に皮膚アレルギーを起こす「全身性接触皮膚炎」ですので、お口の中の症状よりもアトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、湿疹、乾癬、にきび、脱毛などの疾患として「口腔内から遠隔の皮膚」に表れる事が多いです。
しかし50歳以降になると、口腔内に症状が出る頻度が急激に高くなります。
よく患者さんで、精神的にすぐれないのは歯科金属のせいではないか?とお尋ねになられる方がおられますが、歯科金属アレルギーと精神疾患との関係は私にはよく分かりません。

なぜ口腔内の金属がアレルギーを起こすのですか?

歯科金属は口腔内で腐食します。異種金属間の電気的腐食(ガルバニー反応)、擦過腐食(ブラッシングなど)、咬合による腐食、飲食物、プラーク、唾液などとの接触、PHや温度変化などにより、歯科金属が腐食してイオン化し体内に吸収され、タンパク質と結合します。それが体から「異物=抗原」として認識され「感作反応」が起こります。

パッチテスト(PT)の結果は信頼できますか?

信頼度は70~80%くらいです。確定診断とはなりません。他にリンパ球幼若化試験(LST、採血が必要)がありますが、大学病院やアレルギー科、皮膚科などで受けることが出来ます。
その結果を歯科医院さんに持って行かれて、材質などの相談をされて下さい。
またパッチテストは必ず7日後の判定まで行って下さい。

金や白金加金などの歯科修復材料はアレルギーを起こしますか?

貴金属でもアレルギーを起こす事があります。またチタンアレルギーも存在します。チタンはインプラントや義歯に多く使われています。

アマルガムは今でも使われていますか?

近年は単独で歯科治療で使われることはほとんどなく、またアマルガム修復が施されている歯を見かける事もかなり減りましたが、年配の患者さんの虫歯治療で金銀パラジウム合金を除去するとアマルガムが歯の中から出てくることがしばしばあります。このような表面に露出していないアマルガムも歯科金属アレルギーの原因になることがあります。
またアマルガムは口腔扁平苔癬の原因となることが多いです。


▲アマルガム(水銀を含みます)

セラミックスはアレルギーを起こしませんか?

セラミックス自体はアレルギーを起こしませんが、セラミックスを接着するレジンセメントはアレルギーを起こす事があります。またハイブリッドプラスチックはアレルギーを起こす事があります。

金属を歯科医院で取り除いた後に皮膚の症状が悪化しました。どうしてですか?

金属を除去する時に削って除去しますので、体内に金属イオンが入り込みます(金属の粉末を飲み込んだり、あるいは吸入)。そうすると翌日から10日後くらいの間に皮膚症状が強く出たり、今まで症状が無かった部位に発症することがありますが、しばらくすると落ち着いてきます。
逆に言えば、「除去した歯科金属にアレルギーがある」ことの確定診断になります。

チョコレートを食べるとニキビができます。何故ですか?

金属アレルギーの原因物質が体内に侵入するルートはお口の中の金属の腐食だけではありません。チョコレートにはNi(ニッケル)が多く含まれます。Niは歯科金属にも多く使われています。ピーナッツ、大豆、お茶にもNiは多く含まれています。
また缶詰製品や金属の調理器具からも金属を吸収することがあります。


▲14番目のNiに強いアレルギー反応

アトピー性皮膚炎でステロイドを長年使っていますが・・?

ステロイドや免疫抑制剤を長期に使っていると、歯科金属の除去をしても改善に時間がよりかかる傾向があります。

歯科金属を除去して症状が軽くなりました。その後気をつけることは?

歯科金属を除去して、抗原となりうる原因物質がなくなり、皮膚症状が改善した後も、原因物質が含まれる製品には注意すべきです。ピアス、メガネのフレーム、ベルトの金属、腕時計、皮革製品(Cr クロムを含む)、金属粉が出る作業、ダニ、日焼け止めなど。
歯科金属アレルギーの患者さんは、複数のアレルギーの原因を持っています。ダニはアレルギーの原因になりやすいです。また日焼け止めには酸化チタンが含まれています。

掌蹠膿疱症の原因には何がありますか?

歯科金属アレルギー、根尖病巣、扁桃腺があります。体内の慢性炎症が原因となることがあります。掌蹠膿疱症の治療の第一選択は扁桃腺摘出だそうです。

仮歯でもアレルギーを起こしますか?

はい、起こすことがあります。

チタンは金属アレルギーを起こしませんか?

以前は、チタンは生体親和性や耐食性が高く、アレルギーを起こさないと言われてきましたが、口腔内で使用することで、チタンも腐食することが知られてきました。
またインプラント治療を経験する患者さんや、チタンのかぶせ物などを入れる患者さんが増えてきたことで、チタンアレルギーの患者さんが増加しているのは事実です。
メガネ屋さんや時計屋さんで「チタン製」と書いてあるのをよく目にするので、「チタン=安心」という意識が植えつけられてしまいますが、実際にはチタンもアレルギーを起こします。
インプラントが顎骨と上手く結合しない患者さんの中には、チタンアレルギーの方もいるのではないかという説もあります。
一度埋入したインプラントを除去することは非常に困難です。ジルコニアインプラントはチタンアレルギーがある方には有効で、さらなる開発が期待されます。